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<<   作成日時 : 2012/08/08 17:55   >>

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 夏休みのスピーカー工作完成に合わせて、2枚のパイプオルガンのCD(中古品)をネットで購入して八ヶ岳に来た。スピーカーが完成(昨日の記事)したので、この2枚をさっそく聴いたが、びっくりした。一枚は外盤ERATOのマリー・クレール・アランの地味な一枚。もう一枚は大好きなカール・リヒターが亡くなる2年前の日本公演ライブ盤。二枚のあまりの違いに心境複雑だ。写真はTDK発売のライブ盤。


マリー・クレール・アランの一枚は音楽への暖かい眼差し
 アランのCDはフランスERATOのもので、17世紀のニコラス・グリニィのカソリックのミサ詠唱にオルガン曲を加えたミサ曲。このオルガン・パートをアランが演奏している。演奏も録音も一流のCDだった。録音場所はヴェルサイユにあるル・シャンル・チャペル。オルガンは元々教会の礼拝用楽器で、石造りで残響が聖堂に輻輳して満ちあふれる音楽である。


残響は5秒

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 オルガンと修道士による斉唱が交互に奏でられるが、オルガンと斉唱、どちらのパートも残響が余韻をたなびかせながら消えていくのを待って次の演奏に移っている。計ってみるとこの聖堂の残響は5秒だった。オルガンの最後の旋律がやむと余韻が聖堂内を流れてやがて静かに静寂に戻る、その間に5秒もかかっている。タンノイのスピーカーはその余韻を最後の小さな音まで再現している。至福のひとときを味わって次の一枚に移った。

カール・リヒター最後の日本公演ライブ盤

 このCDはリヒターが亡くなる2年前、東京・目白の東京カテドラル聖マリア大聖堂でのコンサートのライブ録音盤だった。演奏と録音は1979年だがCD化は2001年とある。 CD添付のブックレットによると、この録音はFM東京の「TDKオリジナル・コンサート」放送用にFM東京が収録したものだ。曲はいずれもバッハのオルガン曲だが、最初の一曲を聴いてとんでもない噴飯モノぶりに愕然としてしまった。
 幻想曲ト短調が終わると同時に、盛大な拍手もそのまま録音されている。2曲目もそう、全7曲すべて曲が終わると盛大な拍手が収録されていた。いかにもライブ盤ですよと誇るような耳障りの悪い拍手だった。最後の第7曲が終わるとコンサート会場の雰囲気を伝えるかのように長く拍手が収録されてもいる。

曲の終わりと拍手の“間”は、すべて1秒!!!

 アランの静謐な演奏を聴いたあとなので、東京カテドラルの残響がどれぐらいなのか、それも楽しみだったが、残響はゼロだった。聖堂の残響がゼロかどうかはわからない。オルガンの響きがまだ残っているときに聴衆が音楽を打ち消すように我がちに拍手で余韻をことごとくカットしてしまっていた。なんというコンサートであろうか。
 リヒターはこのコンサートを白けきって演奏したのではないか。東京のバッハファンの程度を軽蔑しながら演奏したのだったらなんと悲しいことだろう。
 FM東京とTDKに、音楽の残響の大切さを理解しているスタッフがいないことも暴露してしまっていた。現代の録音技術で拍手だけを消し去って残響を残すことができるかどうか知らないが、残響に拍手を被せてしまうのは簡単だろう。毎曲盛大に拍手をCDに収録している様子から、制作者もそれを好ましいと思っていたに違いない。
 コンサートの最後の曲、トッカータ、アダージョとフーガハ短調では極めつきの終わり方までやってのけていた。曲が終わった瞬間、リヒターが最後の旋律を終え鍵盤から指を離してわずか0.7秒で競うように大拍手が始まった。そして、このCDではその拍手を延々と聴かせ続ける・・・・。


ブックレットも噴飯モノだった

 このCDはTDKが発売し、キングレコードが販売を担当しており、解説ページ数も多い。最初にFM東京プロデューサー岡崎増雄氏がメッセージを寄せているが、リヒターのコンサートと無関係なクラウディオ・アバドとロンドン交響楽団コンサートの失敗エピソードを自慢げに書いているのには驚かされた。そして念のいったことに(この収録では)「何のトラブルもなく順調に事が進んだ」と申し添えている。
 続く中野振一郎(チェンバリスト)・池田卓夫(日経新聞編集委員)2名による対談もひどい内容で、こんな箇所まである。
「まったく余計で違う話なんだけど、拍手のタイミングが今日の日本とかなり違っていて(笑)。堂々としていて、だれが聴いても終わったことがわかる曲では、普通のタイミングなんだけど、意外な終わり方をした曲だと、ここで終わるのぼく知ってんだー、みたいな人が今日よりも多くいたというのが、非常になんというか、ほほいましい」(池田)。
「そうやな、待ち構えてるよね、よーしやったるでー、みたいな(笑)」(中野)。
 文章もひどいが残響の大切さへの配慮がふたりにもまったく欠落している。この文章からすると、ひょっとして本当は数秒の残響を味わってから拍手が始まったコンサートを録音編集段階で1秒にカットして統一させてしまったのかとまで、疑いたくなってしまう。最初の曲から第6曲まで判で押したように、曲が終わってきっかり1秒後に拍手に変わっているからだ。制作者が残響に無頓着で、1秒後に拍手を被せてしまった可能性まで否定できない・・・とすると、なんと悲しいCDであろうか。
 申し添えておくが、1980年前後当時、だれもが我がちに拍手したわけではない。この時代に、マリー・クレール・アランのバッハオルガンコンサートを横浜県民ホールで聴いた日のことを思い出す。妻が学生時代からアランの大ファンなので、ふたりで行ったコンサートだった。
 最後の曲が終わった途端、私の前の席の男が残響を打ち消すようにひとり拍手して、「この曲 ぼく知ってんだー」(引用させてもらった)風の馬鹿をやった。それから間をおいて拍手が始まってから、私は前の席の男の頭を小突いてやった。びっくりして振り向いた馬鹿に言ってやった。「君ひとりのためにアランさんとここの全員が大迷惑を受けた。わかっているのか!!」と。
 昨年、横浜みなとみらいホールであったドイツ・ヴッパータール交響楽団と上岡敏之のコンサートの感激はホームページで紹介した。これも残響と余韻が深く印象に残ったコンサートである。東京の音楽ファンよりも横浜の方が質がいいのだろうか。ヴッパータール交響楽団の記事は下記に掲載してある。

「上岡敏之とヴッパータール交響楽団」
http://www.geocities.jp/tiarashore/oriori/oriori42.html

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